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  • Terakawa Jun

「(障がい者)就労支援フォーラムNIPPON2019」

今年も日本財団主催の「就労支援フォーラムNIPPON2019」に行ってきました。このフォーラムは福祉業界の最先端の情報に触れることができ、いつも刺激と学びをもらっています。


今回、2日間にわたり計9個のセッションがありましたが、この中から個人的に一番面白かった「障害者雇用ビジネス~それは安易な雇用ではないのか?~」を紹介します。

タイトルからして過激ですが(笑)、パネリストが多様なメンバーでとても良かったです。


<パネリスト>

・中島隆信氏(慶應義塾大学教授)

・中村健太郎氏(アクセンチュア(株)マネジングディレクター)

・藤尾健二氏(千葉障害者就業支援キャリアセンター長)

・山田雅彦氏(厚生労働省政策立案総括審議官)

・玉木幸則氏((社福)西宮市社会福祉協議会係長、脳性マヒ当事者としてNHK「バリバラ」でお馴染み)


大きく2つのテーマで討論されました。

一つ目は、障害者雇用ビジネスについて。これは、障害者法定雇用率を満たせない企業に対して、代行で障害者雇用を行うビジネスのことです。

二つ目は、みなし雇用について。これは企業の仕事を福祉事業所に外注し、一定額以上の仕事には実雇用率にカウントするという考え方です(今のところ導入されていません)。


激しい論戦になったのですが、議論が色々な方向に行ったのでまとめるのは難しいです。箇条書きになりますが、ご了承ください。色々な立場、考えがありますので、内容として正反対のことも書かれています。


・雇用率を満たしていたらいいのか?実態は?障害者に任せる仕事がない?

・働くことは、人生の意義を得る機会の場。

・代行ビジネスに頼る民間企業は責められない。ルールを作った役所が悪い。

・障害者雇用を形容する曖昧な表現。このタイトルも何を持って「安易」なの?定義をはっきりしろ。障害者を特別視していないか?

・障害者の生産性を向上させる政策が障害者雇用率、社会収支において最も効果がある。法定雇用率の引き上げや懲罰的インセンティブは雇用率改善の効果が薄く、社会収支も悪化させる。企業への障害者雇用の強要は社会にとってマイナスで、みなし雇用は障害者の生産性を向上させる。


・特例子会社やA型事業所の最低賃金除外制度はおかしい。お金の二重取りでは?

・大企業は特例子会社で終わっていないか。特例子会社は一つのステップでは。

・アクセンチュアの障害者雇用の取り組み。コンセプトは、成長と貢献の充足。①環境、②仕事をつくる:障害者がやりやすい×会社へ貢献の仕事。データクレンジングなど、③成長:業務スピード×業務精度をグラフで見える化、④キャリア、⑤仕事を組み合わせる、⑥貢献の見える化:月の業務削減時間、会社への貢献金額を見える化、本人にフィードバック。他社へこの仕組みのパッケージ販売を予定。ある程度刺激がある方が当事者の満足度は高い。データを取ることでその人の得手不得手が見える。

・安易に特例子会社批判するな。感情論で話すな。

・障害者の仕事の質の問題で企業として雇うのは難しくても、仕事の外注はできる。みなし雇用は認めるべき。選択肢を増やすのでは。


・雇用率カウントの基準は障害者手帳の有無。変えるべきでは。障害種類の多様化。何が障害か分からない。

・職場の合理的配慮が実現されやすいのは直接雇用では。みなし雇用をなぜ法定雇用制度でやる必要があるの?

・障害者手帳の有無という基準をやめると、障害を客観視できないから制度として成立しない。

・企業が障害者雇用をするには規模と経験が必要。また、雇用側に倫理観が求められる。

・企業に取ってみなし雇用が障害者雇用を投げるアイテムになってはダメ。みなし雇用を雇用率に入れるのは反対。本来、雇用を通じて障害者を理解する場のはず。社会が醸成していないからこういう問題が起きている。


・アクセンチュアのようなプログラムがあれば、キャリアアップを自分でできない障害者でも全体の底上げにつながる。

・障害者は会社の仕組みに無理して合わそうとする。ハードの整備やテクニックだけの問題ではない。一番大事なのは話し合い続けること。

・みなし雇用とか(重度障害者の)ダブルカウントとか障害者をバカにするような言葉はやめろ。

・障害者が抱えている問題は一般の人も抱えていて、障害者が色濃く出ている。

・特例子会社やA型事業所の有り方は議論すべき。


・障害者に縁がない人をどれだけ巻き込むかが大事。でないと、共に進めない。

・企業に精神障害者が増えている。雇用管理に苦しんでいる。

・企業と障害者が話し合い、合理的配慮を形成する。欧米には対話の概念がない。アメリカは特例子会社のことにケチをつけるが、障害者雇用は進んでいない。

・障害者の言うことが絶対ではダメ。行きづまる。

・雇用率至上主義の問題。雇用率を算定した定義を出せ。


・省内で統計の細かい議論がまとまらない現実。基本的にデータでは人を説得できない。制度を作るには強い意志が必要。

・教育の段階から働くことの意識付け、仕組み化の必要。

・企業は生産性を優先するので、障害者雇用の概念だけ持ち込んでも優先順位が低い。福祉の枠ではなく経営戦略として位置づけ、制度設計する必要がある。


長いですね、すみません。箇条書きでぶちこんで書いたのでライブ感が伝わらないと思いますが、役所、企業、障がい者、大学、福祉から多様かつ本音の意見が出てとても面白かったです。


この「就労支援フォーラムNIPPON」は、今回4回目の参加でしたが、毎年その回のキーワードが頻出し、その後世間にも広がる印象があります。

今年は印象的なキーワードはありませんでしたが、フォーラム全体を通して2006年に障害者自立支援法が施行、企業への就労移行支援が始まってから10年以上経ち、改めて障害者雇用の質を問うというテーマだったのかなと感じました。