2020年は新型コロナの影響もあり、社会生活、特に「働くこと」に対して大きな変化がある年でしたね。その変化の一つに、障害者雇用があります。1960年に制定された障害者雇用促進法は何度も改正を重ねており、今年2020年4月1日にも新たに改正となりました。実はこの障害者雇用は日本だけでなく、全世界的なトレンドであるSDGsにも関連しており、企業がより良い社会実現に向けて力を尽くしていることの、アピールチャンスと捉えることができます。今回は障害者雇用の概要やメリット、取り組みの工夫についてご紹介します。社員のメンタルヘルスでお悩みならロコソルへ障害者雇用の制度障害者の安定雇用は「障害者雇用促進法」という法律によって枠組みが定められており、大きな特徴としては、民間企業に障害者の法定雇用率が2.2%とされています。逆算をすると、45.5名以上雇用している企業は、障害者1名の雇用枠が義務となります。※2021年4月までに法定雇用率は2.3%まで引き上げられる見通しです。この義務を達成していない企業には罰金として納付義務が発生し、それを財源に義務を果たした企業へ報奨金・助成金が出る仕組みとなっています。努力をして企業にはしっかりと見返りもある制度となっていますね。ここでいう「障害者」とは、「身体障害や知的障害、発達障害を含む精神障害、その他の心身の機能の障害により、長期にわたり職業生活に相当の制限を受ける者、あるいは職業生活を営むのが著しく困難な者」と定義していますが、法定雇用にカウントされるのは障害者手帳を持っている方となります。ちなみに、最新の2019年のデータでは達成企業が48%という水準ですが、年々数字は増加しており、まだまだ目標までのギャップはありますが、障害者雇用は着実に進んできているといえるでしょう。次に、障害者雇用をすることにより企業メリットについても見ていきましょう。企業メリット障害者の雇用、活用は報奨金のほかに企業にもメリットがあると考えています。もちろん採用自体で戦力が増えることもありますが、社員が自身の業務や「働く」について考えることがメリットにつながります。・既存業務を見直す契機となる。障害者の受け入れで大切なことの1つに既存の業務整理があります。どうしても「できること」「できないこと」が発生するため、これまでの業務フローを見直し、適切な業務に適切な人員で対応することが求められます。職務によっての業務範囲や切り出した方が効率が良いものなどの割り振りに役立つことが想像できるでしょう。また、障害者雇用が成功させるためには、人事だけの力ではなく、現場と体制構築を丁寧に行うことが重要です。運用がうまくいっている企業では、募集を出す前に社内でワークショップを行って意見出しをしたり、就業後もメンバーで必要なルール設定をしたりと、現場で自らの業務の内省を行っています。そのことから、結果的に業務の最適化が行われ、会社の生産性の向上にもつながることも考えられます。・多様な働き方の土壌ができる。昨今はダイバーシティやSDGsなど、全世界的に差別の撤廃や、すべての人が公平正当に生活していける世界が目指されています。ちなみに障害者雇用の観点はSDGsの目標8と8.5に該当します。『8 働きがいも経済成長も すべての人のための持続的、包摂的かつ持続可能な経済成長、生産的な完全雇用およびディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を推進する』『8.5 2030年までに、若者や障害者を含むすべての男性及び女性の、完全かつ生産的な雇用及び働きがいのある人間らしい仕事、ならびに同一労働同一賃金を達成する。』特に最近の特徴は、理想論だけで終わらせず、投資判断の基準(ESG投資)にしたり、事業性とかけ合わせたりする潮流となっています。一部では上記投資判断の流れからも、近い将来は「障害者雇用をしない、という選択自体があり得ない」世界観になるとも言われています。現在は国策や大手企業を中心に、導入の工夫がされていますが、今後どんどん世の中で一般的になってくるでしょう。ハンディキャップのある人材と適切に雇用することで、企業風土としても柔軟になり、今後発生する変化にも強い組織になれる可能性もあります。取り組みのポイント、気をつけることいざ障害者雇用に取り組む際の工夫や気をつけることについても考えていきましょう。上記のように障害者雇用自体は価値のあることですが、やはり導入時は現場へも負荷がかかります。また、受け入れ体制が整っていないことで、障害者採用者の早期退職につながる可能性もあるでしょう。受け入れに必要な要素はいくつかありますが、中でも重要視されるのがは「配慮」というキーワードです。また、私はこれに加えて「遠慮にならないこと」も大切と考えています。「配慮」については法律によって「合理的配慮」という言葉で、提供が義務づけられています。この「合理的配慮」は下記定義されています。「障害のある人が障害のない人と平等に人権を享受し行使できるよう、一人ひとりの特徴や場面に応じて発生する障害・困難さを取り除くための、個別の調整や変更のことです。」具体的には視覚障害をお持ちの方へは点字や音声での情報提供をしたり、肢体不自由の方へは移動の支障を取り除いたり体温調節のため服装の自由度を上げることなどがあります。一方で、国としても事業の存続に影響があるようなコスト負担や実現が難しいことを無理やり達成させようとはしてはおらず、基本的な考え方としては当該従業員と事業主の相互理解によって提供されるものとしています。次に「遠慮」についてですが、ここのレベル感が障害者採用の難しい点であり、成功の成否を握る要素と考えています。配慮をし過ぎて、会社側が「遠慮」をしてしまうことは、当人に対して失礼に当たったり、「期待をされていない」と捉えられてしまう可能性もあります。お互いが相手を考えた結果、悪い方向へ進んでしまうのは避けたいですね。このようなことを避けるためにも、受け入れ現場の状況理解や当人たちと人事、上司、同僚間でのコミュニケーションが大切になります。ギャップがあれば適宜改善をしていくことで、双方にとって心地良い「配慮」が生まれ、働きやすい職場となるでしょう。障害者雇用は良くも悪くも職場に変化をもたらすものですし、センシティブな内容ですので、当人のみならず、メンバーの中でもどう相談をすれば良いのかストレスに感じる人も出てくるでしょう。組織、マネジメントラインの立場からは各社員の心の状況のチェックや今まで以上に丁寧なコミュニケーションが求められることとなります。まとめ今回は障害者雇用についてご紹介してきました。障害者雇用はもはや個々の問題ではなく、社会的なテーマになっています。導入にあたっては事業主にも相当の努力が必要がありますが、その導入の過程から、社員1人1人が既存の仕事に対して向き合う良いタイミングにもなるとも言えます。近い将来、障害者雇用はさらに一般化してきて、どこかのタイミングで導入を検討される企業も多いかと思います。今のタイミングから社内体制の見直しや社員の状態を見える化するなど、土壌を整えて行くことや良いかもしれませんね。社員のメンタルヘルスでお悩みならロコソルへこちらの関連記事もご覧ください。「障がい者雇用の企業の本音と本当に行われるべき取り組みとは」