はじめに発達障害は目に見えない障害ですが、その特徴を知ると少し身近な感覚を持っていただけたのではないでしょうか。前回記事 大人の発達障害って何?その種類や特徴とは?後半では、大人の発達障害の方、もしくはそういった傾向のある方が職場で働くとどういった問題が起きやすいのか、また周囲はどういった対応を行っていけばいいのかについて取り上げていきます。社員のメンタルヘルスでお悩みならロコソルへ発達障害の社員が仕事で陥りやすい問題誰しも仕事を選ぶ際に「こんなことに興味がある」と思うと同時に、自分の性格や特性はどうなのか、何が向いているだろうかと考えたことがあるのではないでしょうか。必ずしも自分のやりたい、向いている仕事につけるとは限りませんが、それでも多くの方はある程度自分を調整しながら仕事に取り組まれていると思います。しかし多くの発達障害の方は、この「ある程度自分を調整して」というのがそうでない方と比べて大変難しくなります。前述しましたが、これはもともとの脳機能の問題であり、本人の努力だけではどうしようもないのです。発達障害のある方に向かない仕事を任せると、仕事のパフォーマンスが著しく下がるのはもちろんのこと、仕事の不安感やストレスからうつ病などの二次障害を引き起こしやすくなります。では、具体的にどのような問題が起きやすいのでしょうか。・Aさん(自閉症スペクトラム症)の場合上司から軽作業を頼まれたAさん。やり始めてすぐに上司は急いだ様子で「キリがいいとこでこれ総務に持って行ってくれる?」と書類を渡しました。Aさんは「キリがいいところで」がピンときませんでしたが、作業が終わってから行けばいいと思い、書類を受け取りました。上司の急いだ様子や、「いつでもいい」ではなく「キリがよいところで」の言い方からある程度急いで持っていく必要があると感じますが、Aさんにはそれが読み取れません。結局総務から催促され、トラブルとなってしまいました。・Bさん(注意欠如・多動症)の場合Bさんはその日の朝、昨日の仕事の続きをしようとパソコンを開きました。その時、上司から「今日の午前中のうちにこれを資料室に片づけてほしい」と言われました。Bさんは資料室に片づけにいきましたが、その途中でいいアイデアがひらめきました。またすぐに資料室に戻って片づけの続きをすればいいと思い、途中で自分のデスクで仕事をし始めました。するとそれに夢中になり、資料室に戻ることを忘れてしまいました。資料室に行った他部署の人からクレームがきて問題が発覚しました。なんだかめんどくさそうだから、一緒に働くのはちょっと・・・と感じられた方もいるかもしれません。しかし、発達障害の特徴が単純に短所であるとは言い切れないのです。興味がある分野に異常なほど熱心に取り組んだり、衝動性が「行動力」として評価されたりと、仕事とのマッチングが合えば決して「障害」ではありません。発達障害の社員がいる職場で行いたい対応では、どのようなことに注意していけばよいのでしょうか。先ほどの例で考えてみましょう。・Aさん(自閉症スペクトラム症)の場合自閉症スペクトラム症の特徴として、「あいまいなものはわかりにくい」というのがあります。この例で言うと、「キリがいいところで」がそうです。おそらく上司の方は作業をしているAさんに負担がないようにそう言ってくださったのではないかと思います。しかし、実はAさんにとっては、「作業を中断して今すぐに」と言われた方がわかりやすいのです。もしくは「コピーを取る前に」など具体的なタイミングを伝えるのもいいですね。「指示は具体的に」がキーポイントです。日常業務はついつい簡略化して伝えてしまいがちですが、その点は注意しましょう。・Bさん(注意欠如・多動症)の場合この場合はまずBさんの仕事の取り組み方を考えていく必要がありそうです。注意欠如・多動症には、順序立てて作業をしたり時間管理したりすることが苦手という特徴があります。また、思い立ったら行動してしまう衝動的な面もあるので、こういったことは起こりやすいでしょう。ひとつの作業を終わらせてから次をする。そういうルールを決めることも必要かもしれません。そして、これはAさんにもあてはまることですが、指示を口頭ではなく文字で示すのも有効です。毎回メモを渡すという意味ではなく、やることを見える化するためです。やることをリストにして全体の見通しを持ち、やったことにチェックをしていきます。皆さんの中にも普段からこうやって仕事をこなしておられる方も多いのではないでしょうか。ただ、Bさんの場合はついついリストの存在を忘れてしまうこともあるかもしれません。先ほどの例で言うと、自分のデスクに戻った時には覚えていても、夢中になっているうちに忘れていましたね。こういう時には、タイマーで10分経ったら音がなるようにするなど、客観的に思い出すきっかけを作っておくといいと思います。パソコン作業では、決まった時間にメッセージを表示する機能もあるので、それを活用してその都度リストを確認するようにするのもいいですね。特徴を知って職場の大きな戦力にここまで職場で起こりやすい問題とその対応について考えてきました。発達障害は知的障害や身体障害と比べると診断が難しく、本人だけではどうしようもないのに努力が足りないと責められたり、問題児だとレッテルを張られたりしがちです。これはあくまで私見ですが、実際会社の中に発達障害の要素を持つ人はたくさんいると思います。「障害」と診断された人にはもちろん合理的配慮を行うべきですが、もしかして・・・という方々が、もし少しの配慮で仕事がしやすくなるのなら、企業にとっても本人にとってもプラスです。弊社ロコソルは障害者雇用にも知見があり、「職場でトラブルが多い社員がいて困っている」といったご相談にも対応しております。社員のメンタルヘルスでお悩みならロコソルへこちらの関連記事もご覧ください。「うつは心の風邪で頑張らないものか?上手な休み方と必要な周囲の支援とは?」