どんなことに不安を感じるか、どの程度感じるかにはかなりの個人差がありますが、不安を感じることは誰にでもあり、多くの人はそれとうまく付き合いながら日々生活しています。では、不安に押しつぶされて精神を病んでしまうのは、その人の性格によるもの、その人の問題なのでしょうか。確かに本人の持つ特性(特有の性質)に影響される部分はあると思います。しかし、それだけではないのです。この記事では不安とは何なのか、病的な状態に陥るのを防ぐにはどうしたらいいのかを考えていきます。社員のメンタルヘルス不調でお悩みならロコソルへ不安とは何かそもそも、不安とは何なのでしょうか。大勢の前でプレゼンする時。初めての場所に訪問する時。そんな時には多少なりとも緊張するという方は多いのではないでしょうか。緊張して頭が真っ白になったなんてことは誰しも経験することですが、これはなかなかコントロールできないですよね。私たちの脳は不安を感じるとあるホルモンを分泌し、それによって心拍数が増加したり血圧が上昇したりします。これは非常に原始的な脳の反応によるもので、私たちに危険から身を守る準備を促しているとも言えます。不安にも種類がある?不安を感じるのは大体何かしら困っている時であるため、危険に備えるよう脳が反応することです。では、不安の感じ方に大きな個人差があるのはなぜなのでしょうか。心理検査の中に、不安を測定するSTAIという質問紙があります。これは、不安を2つに分けて質問が作られています。1つは特性不安です。これはその人が心配性であるといったもともとの性格を表しており、比較的一定しています。2つ目は状態不安で、最近の状況による不安です。例えば大事な商談の直前や自宅の近くで大きな音がした時などは、誰でも緊張したり不安になったりします。そういったその状況によって変化する不安です。実は不安をこの2つに分けて考えるのはなかなか斬新なことでした。よく、不安傾向が強いからストレスが溜まりやすいと言われます。確かにそうかもしれません。しかし、不安傾向が強い人がどんな場面でも緊張し不安にかられているとは限りません。逆に、とても緊迫した場面や状況が続いていれば、特性不安があまり高くなくても強い不安を感じることになります。つまり不安を感じるということには、本人の性格だけでなく、置かれた状況が大きく影響すると言えるのです。ストレスが続くと脳が休めなくなる不安を感じた時に起こる脳の変化は本来一時的なものであり、しばらくすると落ち着いてきます。しかし慢性的なストレス下では、脳が不安を感じている状態から回復しなくなると考えられています。つまり、常に脳がパニック状態にある、病的な状態だということです。毎日出勤する職場で、怒られるかもしれないと思って意見が言えない、声がかけづらくて質問できない、周囲の顔色をうかがう日々。そういう考えただけで緊張するような状況にいれば、そのような状態に陥りやすくなります。では、そういった状況を変えていくにはどうすればいいのでしょうか?心理的安全性を高める職場で働く上で緊張や不安を感じる場面は多々あります。しかし通常は、そんな時もあるけどリラックスしている時だってある。そんなものではないでしょうか。「常に周囲をうかがいながら気を遣って」ではなく、「気軽に声をかけて」質問できるような、そんな職場で働くならば、確実に不安は低減するはずです。そんな職場にするには、心理的安全性が大切になります。心理的安全性とは「チームメンバーが臆することなく発言・行動できる状態」のことを指します。心理的安全性が低いとどうなる?心理的安全性の概念を最初に提唱したエドモンドソン教授は、心理的安全性が低い組織では、社員に次の4つの不安が存在しているとしています。・無知だと思われる → そう思われたくないから「わからないけど質問しない」・無能だと思われる → そう思われたくないから「ミスを隠す」・邪魔をしていると思われる → そう思われたくないから「議論が長引かないように自発的な発言をしなくなる。それにより、新たなアイデアが出る機会を失う可能性がある」・ネガティブだと思われる → そう思われたくないから「他者への指摘や否定を避ける。それにより、課題が解決されないまま放置される」このように、心理的安全性が低い組織では不安から自分を守るために、私たちは自己印象操作を行います。自己印象操作は社会で生きていくためにある程度は必要ですが、自らの学ぶ機会や有意義な意見を発信する機会を失うことになります。また、社員がこの「自分の印象を悪く見せないこと」に集中してしまうため、「組織のために」考えることが減ってしまいます。よって、これらの不安は率直な意見や行動を阻害することとなり、結果として生産性の低下や大きなトラブルを引き起こしてしまうのです。まとめここまで、不安とは何か、社員が病的な状態にならないために職場が取り組むべきことを考えてきました。心理的安全性という言葉は馴染みがないと思われた方もいらっしゃったかもしれません。よく似た概念の言葉として「信頼」があります。エドモンドソン教授は、信頼は個人同士の関係性におけるもので、心理的安全性は集団レベルの現象だとしています。そう考えるとわかりやすいかもしれませんね。社員のメンタルヘルス不調でお悩みならロコソルへこちらの関連記事もご覧ください。「大人の発達障害って何?その種類や特徴とは?」