「子育て世代」が仕事と両立して働くことができ、周囲の社員も負担少なく働くことができる職場環境をつくるためにはルールと運用の工夫が必要です。「子育て世代」はわりとよく聞く言葉ですが、これは内閣府国民生活白書において、「これから結婚をしようとする若者から、大学生の子どものいる親までで構成される世代」と定義されています。就労するのに一番大きく影響する「1人で留守番をさせるのが難しい年齢の子どもがいる」と考えても、近年の高齢出産傾向を踏まえると、これに当てはまるのは20~50代前半といったところではないでしょうか。そう考えると、働く人の多くがこの世代ということになります。エンゲージメントを向上したいならロコソルへ行政が掲げる取り組み厚生労働省によると、子育て世代が働きやすくなるように次のような取り組みが行われています。・幼児教育・保育の無償化:2019年10月から実施。・待機児童解消・男性の育児休業、短時間勤務制度等の利用促進・「子育てサポート企業」の認定(くるみん認定):要申請これらの取り組みの目的は、働きたいと思っている人が子どもの預け先がないと悩まなくて済むように、また、子育てを女性の仕事とせずに男性も参加しよう、企業としても応援するよ、ということですね。取り組みの効果はでている?厚生労働省の発表によると、2020年4月時点で待機児童数は調査開始以来最小となっているそうです。とはいっても、いまだ全国で1万人以上の待機児童がいるとのことで、女性の就業率上昇を考えると引き続き整備が必要です。男性の育休取得はずっと低水準が続いており、現状を打破するためにも2022年4月の制度改正が待たれます。くるみん認定企業は徐々に増えてきていますが、社会全体としてはまだまだ道のりが長そうです。働きやすさを創る行政としての取り組み、その効果について見てきました。では、制度としてではなく、実際の現場でできることはないのでしょうか。私の経験をお話しします。以前私が勤めていた職場では、男女の割合が大体半々。それもあってか比較的育児に積極的な男性が多く、「ちょっと子どもが熱出したみたいだから昼から帰ります」「来週参観日だから休みます」みたいな会話もよく聞いていました。そんな職場で後輩が産休を経て一年間の育休を取得。退社時間を一時間早くする時短勤務体制で職場復帰しました。しかし復帰して数日後、「朝保育園に子どもを送って出勤するのが大変。終業時間は通常でいいので出勤時間を一時間遅くしたい」と申し出ました。実際の勤務時間は変わらないし、問題ないと思っていましたが、上司はにべもなく却下しました。当時私の所属部署では、必ず毎朝全員参加のミーティングが行われていました。上司は、出勤時間が遅くなるとミーティングに出られなくなる。それでは他の人にも迷惑がかかるという理由で許可しなかったそうです。みんなプライベートは色々あるけど各自がうまく調整して働いているのだから、と。それを聞いて、正直なところ上司の言い分も一理あると思いました。復帰してすぐは大変だろうと、周りのみんなが何かと彼女に気を遣っていることも知っていたからです。しかし一方で、これでいいのだろうかと疑問も感じました。職場の中で「〇〇だから絶対に××できない」ということが、本当のところどれだけあるのでしょうか。多くは「いままでこうしてきたから」「これでうまくいっているから」という理由であり、実際のところ絶対に変えてはいけない理由はそれほどないように感じます。私たちがいつの間にか持っていた思い込みにより、変えられないと決めつけていることもあるのです。先ほどの例で考えると、もしかしたらミーティングは朝行わなくてもいいのかもしれません。揃わない人がいてもメモ書きで対応できるかもしれません。問題は、困ったと「SOS」を出している人に対して「ルールだからダメ」で終わらせてしまうことです。集団の中で何かを変えるということは時間も労力もかかります。積極的にしたいことではないかもしれません。それでもそこで検討した何かは、「SOS」を出している本人だけでなく、職場全体の働きやすさを見直すきっかけになります。制度は大切です。子育てしながら働く個人の努力と工夫が大事なのは言うまでもありません。それに加えて大切なのは、職場で個人が困っていると声を上げた時に、みんなで改善できないかを検討してみることです。面倒でも、その取り組みは他の問題解決にも波及していきますし、何よりそういった取り組みを行える職場の雰囲気は必ずいいものになります。エンゲージメントを向上したいならロコソルへこちらの関連記事もご覧ください。『なぜ地方・中小企業でテレワークは進まないのか。課題と対策は?』