パワハラやセクハラなど職場でのハラスメントは従業員のうつやメンタル不調を引き起こす原因にもなっています。また「逆パワハラ」というハラスメントも、職場でのパワハラとして問題視されています。今回は、逆パワハラの定義や事例、対策を紹介します。企業の経営者や部下を抱える方は参考になさってください。職場コミュニケーションを改善したいならロコソルへ逆パワハラとはどんなハラスメント?逆パワーハラスメント(以下逆パワハラ)とは職場で部下から上司へおこなわれるパワーハラスメントのことです。どんなものが逆パワハラになるか考えるにはまず、パワーハラスメントの定義について確認しましょう。厚生労働省の指針によると以下①~③のすべてを満たしたものが職場におけるパワーハラスメントに該当します。①優越的な関係を背景とした言動である②業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの③②により、労働者の就業環境が害されること(※1)厚生労働省「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(令和2年厚生労働省告示第5号)」また職場におけるパワハラはおもに以下6つの類型に分類されます。①精神的な攻撃②身体的な攻撃③過大な要求④過小な要求⑤人間関係からの切り離し⑥個の侵害(※2)あかるい職場応援団「ハラスメントの類型と種類」こちらの関連記事もご覧ください。「ハラスメント2022年最新版。その定義と企業に義務化された対策とは」逆パワハラ3つの事例前項で紹介した指標に従い、3つの事例が逆パワハラに当てはまるか考えてみましょう。① なんでもハラスメントにしたがる部下何かにつけて「それパワハラです!」と主張する部下を持つ、課長のAさん。部下のミスが発覚し、上司であるAさんはクライアントからお叱りを受けました。フィードバックとして改善点や、ときに残業も必要なことを伝えます。ところが問題の部下は「残業を強いられた、自分には責任がないのに怒られた、これはパワハラだ」と騒ぎ立てます。パワハラで訴えられるのを恐れたAさんは部下を叱ることができなくなり、自分の管理能力のなさを責め、強いストレスを抱えています。→一般的には上司が部下に対し優位に立ち、部下を管理します。ところが必要以上に「パワハラ」を主張するのは部下という立場を逆手に取って優越的な関係を作り出しているようにもとらえられます。このケースは状況によりますが、逆パワハラに当てはまる可能性が大いにあります。ただしAさんは上司として部下を管理する立場なので、自分で解決できない部下の問題は、早めに上長や社長へ相談するなどの対策を講じるべきでしょう。② 年上部下からの集団ハラスメント学生時代からインターンや起業を経験してきた若手社員Bさんは、その経験と能力が買われチームをまとめるリーダーに抜擢されました。面白く思わない先輩社員数名が結託してBさんの指示を無視したり、わざとミスをしたりして、リーダーであるBさんの評判を落とそうとしています。→年下のリーダーに対し年上の部下が集団で故意的におこなう逆パワハラといえるでしょう。年功序列が崩れ、若くても能力のある人が活躍する企業が増える一方で、こうした逆パワハラが起きるケースもあるようです。ですが、自分より若くても職歴が短くても、組織では自分の上司であることには変わりません。③ 店長より偉いパート社員3つめは筆者がかつてデパートで惣菜販売店のアルバイトをしていたときの話です。撤退した店舗に居抜きで入店した惣菜店の店長Cさん。あとから撤退した店舗で働いていたパート社員が採用されました。そのパート社員は店長を差し置いて私たちアルバイトへ厳しく指導し、報告もせず勝手に業務ルールを変更し、常に店長を見下すような態度を取っていました。デパートのルールや周りのテナントとの関係などパート社員の方が詳しかったため、店長もそのパート社員には気を遣い、まるで立場が逆転しているかの様です。→自分の方が経験も長く周囲との関係性もできている、という立場を使った逆パワハラといえるでしょう。店長は配属から1年も経たないうちに退職してしまいました。パート社員の態度にストレスを溜めていたのでしょう。逆パワハラが起きる原因逆パワハラが職場で起きる原因を3つ挙げてみます。① 管理や指導が不十分人手不足などで上司が部下を管理できていないケースもあります。また、上司が自分の人事に響くのを恐れて部下を指導できていないケースも。企業として管理体制を整える、逆パワハラにも考慮したハラスメント教育をおこなうのが有効でしょう。② 上司と部下の関係に対する価値観の変化上下関係が激しかった昭和~平成の時代、上司の言うことは絶対でした。上を目指して出世を目論む社員が多かった時代です。ところが令和になり個を重んじる風潮が高まり、職歴や年齢の上下に関係なくみんな対等な関係という考え方の人も少なくなくありません。③ 能力や経験値の逆転進化をつづけるITツールですが、若い人の方が適応が早く扱いに慣れていることが多いです。業務の効率化などによりITを導入する企業は多いですが、付いていけない上司もいます。この状況ではITツールに不慣れな上司を部下が見下すケースも見受けられます。逆パワハラへの対策逆パワハラへの対策を4つ紹介します。事前に確認し、管理職など部下を持つ従業員に展開するといいでしょう。① やりとりは記録に残す言った、言わないにならないよう、部下との大事なやりとりは、メールやビジネスチャットツールを使用しましょう。もし裁判になった場合には証拠になります。② 焦らず落ち着いた対応を取る相手の高圧的な態度や自分が置かれている状況によっては、焦って自分が悪くないのについ謝ってしまう上司も。職場でパワハラを主張されてもすぐに謝るのではなく、まずは状況を把握し、上長または社長など本人より立場が上の人に相談させるようにしましょう。③ ハラスメントの相談窓口を設置するパワハラ防止法(改正・労働施策総合推進法)により大企業では2020年6月、中小企業では2022年4月1日からハラスメント対策の相談窓口の設置が義務付けられました。相談窓口は、社内に設置するパターンと外部に委託するパターンがあります。社内であれば人事部や総務部に兼任で担当者を置く企業が多いようです。外部に委託する場合、社労士や法律事務所に有料で契約し外部相談窓口を設置します。④ 逆パワハラをする側のストレスをケア逆パワハラをする従業員も、心にモヤモヤしたストレスを抱えているかもしれません。あなたの会社では、日頃感じていること、不満など従業員の本音は共有されていますか?逆パワハラが起きる前の対策として、職場の環境を見なおすことから始めてみるのはいかがでしょう。従業員のストレスの原因をさぐりケアすることは企業の発展にもつながる大切な要素です。ただし上司や同僚など同じ部署の人には本音がいい辛いときもあるでしょう。部下の本音がなかなか引き出せないときには、産業医や専門家によるカウンセリングもおすすめです。さいごに逆パワハラの定義や事例、対策について紹介しました。時代の移り変わりとともにITツールの進化や価値観が変化し、上司と部下の上下関係も変わりはじめています。上司の言うことを聞かない部下がいて当たり前、くらいのスタンスでいると心にゆとりが持てますね。紹介した逆パワハラの定義や対策を理解し、個々の従業員を尊重しつつハラスメントを防止できる職場にしていきましょう。職場コミュニケーションを改善したいならロコソルへ